クリスチャン パートナーズ通信 第27号発行日/1996年4月30日 理事長、インド視察団に参加報告 草野理事長 パートナーズインターナショナルでは、一般会員も参加する視察旅行を企画し、援助をしている現地を訪ねています。
今回私は、国際理事会出席を兼ねて視察団に加わり、2月6日~19日にインドを旅しました。 総勢25名がカルカッタを振り出しにミゾラム州、デリー、アーグラー、ジャイプル、ウダイプル等を回りました。世話役はカナダのクロスビー牧師、参加者はカナダ13名、米国10名、オーストラリア1名に日本からの私でした。 忘れられぬ眼差し
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赤子を抱いて物乞いをする女性 |
私は、最初に出合ったこの眼差しに、旅行中ずっと見つめられていた思いでした。
カルカッタは、最近ずいぶん改善されてとはいえ、難民、疫病、犯罪、麻薬、貧困の代表的な街といわれています。
長い乾期の終りの2月、埃と雑踏でごった返す街を、車外に鈴なりに人をぶらさげたバスが左右にくねりながら途を分けて行き、その光景に気を呑まれて見ているうちに、我々のバスは三階建てのかなり大きな建物の横に停まりました。
<マザーテレサの輝き>
「ここがマザーハウスです。」
ノーベル賞を受けた世界的人物に会えるかもしれない。私たちは案内もないまま二回の回廊に上がり、何が起こるのかのと興味と緊張を感じながら、中庭で水を汲み上げ洗濯をしているシスターたちを眺めていました。
すると、いつの間にか私たちの傍らに立っていた小柄な修道衣の人が話し始めました。
「私たちのこのような施設は、世界中に160箇所以上あります。最近中国にも出来ました。皆さんお祈りして下さいね。ここでは90人の孤児の面倒を見ているのですよ。」
この人がマザーテレサ!声は小さくても90歳に近いとは思われぬ生き生きした表情、質問に答える爽やかさ。
一人一人と握手して、記念の小さなペンダントとカードを下さいました。
厳しさがその奥に潜む穏かな眼差しに見つめられて、私は思わず目頭が熱くなり足元に目を落とした時、彼女が裸足であることに気付きました。
自分自身には何も残さない徹底した凄さに、私は打たれました。
ノーベル賞を受けた世界的人物に会えるかもしれない。私たちは案内もないまま二回の回廊に上がり、何が起こるのかのと興味と緊張を感じながら、中庭で水を汲み上げ洗濯をしているシスターたちを眺めていました。
すると、いつの間にか私たちの傍らに立っていた小柄な修道衣の人が話し始めました。
「私たちのこのような施設は、世界中に160箇所以上あります。最近中国にも出来ました。皆さんお祈りして下さいね。ここでは90人の孤児の面倒を見ているのですよ。」
この人がマザーテレサ!声は小さくても90歳に近いとは思われぬ生き生きした表情、質問に答える爽やかさ。
握手するマザーテレサと理事長 |
一人一人と握手して、記念の小さなペンダントとカードを下さいました。
厳しさがその奥に潜む穏かな眼差しに見つめられて、私は思わず目頭が熱くなり足元に目を落とした時、彼女が裸足であることに気付きました。
自分自身には何も残さない徹底した凄さに、私は打たれました。
秘境ミゾラムの『奇蹟』
この旅行でもっとも重要な訪問先はミゾラム州の州都アイザウルでした。
人口9億のインドではその90%がヒンズー教徒です。ところがミゾラム州では、約70万の人口の90%以上がクリスチャンなのです。
インドの東北端、バングラデッシュとミャンマーに挟まれたこの州に住むミゾ族は、紀元前にシリヤからモンゴルに移り、その後南下して現在に至ったもので、日本人とはルーツを同じくしているといわれています。
2月8日朝、カルカッタからアッサム州のシルチャル市まで1時間の飛行の後、専用バスに揺られ揺られ、山並みを越えて目的地に着いた時はもう日暮れでした。
約百年前、英国人サヴィジ、ローレインの二人の牧師が宣教を始めた地方で、その記念碑が立つ峠を過ぎてしばらく行くと、今まで辿ってきた淋しい山里と打って変り、遥か彼方に一面の街の灯が見えてきました。
この州に入るのには政府の特別許可が必要で、その理由の一つは、この地方の民族文化を維持するため、外部からの過度の来訪を避けているとのことでした。
いくつも連なる大波のような岡の斜面に人家が広がっていました。
ここで二泊した私たちは、教会の礼拝、市の助役主催の歓迎会、牧師家庭訪問、孤児院訪問、牧師たちとの座談会などの出席しました。
一昨年この州都は、宣教百年、ミオゾラムの『奇蹟』と自他ともに認めるその発展を祝ったのでした。
認字率もデリー、ニューデリーに次いで高く、州外に宣教師を派遣しているのは、日々の生活を神に感謝し、精一杯その愛に応える生き方を培ってきた宣教の果実でしょう。
現時もカナダのパートナーズインターナショナルは、ミゾラム州に毎月1500ドル援助しているとのことです。
テレビ局のインターヴューを受けた私は、「ここでは人々がそれぞれの使命を自覚していて、その眼差しに活気があることにまず気が付きました。
その印象はカルカッタとは大きな違いです。しかも日本人と明らかに祖先が同じなのですね。そのことを深く実感し、感動しました」と語りました。
事実、礼拝後に一人すっと握手した時、別々に辿った長い歴史の後で再会した親類のようにしっかり見つめ合ったのでした。
人口9億のインドではその90%がヒンズー教徒です。ところがミゾラム州では、約70万の人口の90%以上がクリスチャンなのです。
インドの東北端、バングラデッシュとミャンマーに挟まれたこの州に住むミゾ族は、紀元前にシリヤからモンゴルに移り、その後南下して現在に至ったもので、日本人とはルーツを同じくしているといわれています。
2月8日朝、カルカッタからアッサム州のシルチャル市まで1時間の飛行の後、専用バスに揺られ揺られ、山並みを越えて目的地に着いた時はもう日暮れでした。
アイザウルの教会 |
約百年前、英国人サヴィジ、ローレインの二人の牧師が宣教を始めた地方で、その記念碑が立つ峠を過ぎてしばらく行くと、今まで辿ってきた淋しい山里と打って変り、遥か彼方に一面の街の灯が見えてきました。
この州に入るのには政府の特別許可が必要で、その理由の一つは、この地方の民族文化を維持するため、外部からの過度の来訪を避けているとのことでした。
いくつも連なる大波のような岡の斜面に人家が広がっていました。
ここで二泊した私たちは、教会の礼拝、市の助役主催の歓迎会、牧師家庭訪問、孤児院訪問、牧師たちとの座談会などの出席しました。
一昨年この州都は、宣教百年、ミオゾラムの『奇蹟』と自他ともに認めるその発展を祝ったのでした。
ミゾ族の子供たち |
認字率もデリー、ニューデリーに次いで高く、州外に宣教師を派遣しているのは、日々の生活を神に感謝し、精一杯その愛に応える生き方を培ってきた宣教の果実でしょう。
現時もカナダのパートナーズインターナショナルは、ミゾラム州に毎月1500ドル援助しているとのことです。
テレビ局のインターヴューを受けた私は、「ここでは人々がそれぞれの使命を自覚していて、その眼差しに活気があることにまず気が付きました。
その印象はカルカッタとは大きな違いです。しかも日本人と明らかに祖先が同じなのですね。そのことを深く実感し、感動しました」と語りました。
事実、礼拝後に一人すっと握手した時、別々に辿った長い歴史の後で再会した親類のようにしっかり見つめ合ったのでした。
ジャイプル、ウダイプル訪問
ジャイプルのラジャスタン神学校は、1984年カナダのパートナーズインターナショナルからの献金で設立された立派な学校で、礼拝堂、集会室、図書館のほか寄宿舎もあります。
インド各州から現在25名の神学生が来ています。一行の一人で創立に貢献したドクシー博士の挨拶と、ホースマン牧師の説教の後、現地の宣教者モーゼズ師のハリジャン社会における宣教の報告がありました。
カースト制度とヒンズー教はインド社会の特徴でハリジャン(不可触賤民)はカースト制度外の最下層の人たちのことです。
主に南部と西ベンガル地方に多く住み、政治も対象外にしている人々ですが、ヒンズー教は深く浸透しているとのことです。モーゼス師はこの階層の出身なので、パートナーズインターナショナルは彼の支援に特別責任を感じています。
報告の後、クロスビー牧師が皆に声をかけました。
「モーゼスさんの所に集まってください。彼のために祈りましょう。そして手を彼の体に当てて上げてください。彼は肉体に障害がある人です。」
私たちは顔を伏せ、体を震わせているモーゼズ師に一人一人手を置いて思いを伝えました。
彼の宣教は、あらゆる面で非常は苦難をともなうものに違いありません。
インド各州から現在25名の神学生が来ています。一行の一人で創立に貢献したドクシー博士の挨拶と、ホースマン牧師の説教の後、現地の宣教者モーゼズ師のハリジャン社会における宣教の報告がありました。
カースト制度とヒンズー教はインド社会の特徴でハリジャン(不可触賤民)はカースト制度外の最下層の人たちのことです。
主に南部と西ベンガル地方に多く住み、政治も対象外にしている人々ですが、ヒンズー教は深く浸透しているとのことです。モーゼス師はこの階層の出身なので、パートナーズインターナショナルは彼の支援に特別責任を感じています。
湖での洗礼式 ウダイプルの高原の教会 この日、数十名の若い男女が受洗 |
報告の後、クロスビー牧師が皆に声をかけました。
「モーゼスさんの所に集まってください。彼のために祈りましょう。そして手を彼の体に当てて上げてください。彼は肉体に障害がある人です。」
私たちは顔を伏せ、体を震わせているモーゼズ師に一人一人手を置いて思いを伝えました。
彼の宣教は、あらゆる面で非常は苦難をともなうものに違いありません。
新経済政策
5年前にインド政府は経済政策の大転換を行ない、規制が撤廃されて投資、輸入の自由化、輸出の奨励に弾みがついたと言われています。今回、町はずれにある中小企業の工場団地を訪ねる機会がありました。その一つはインドの得意とする木彫工芸と織物の技術が生かされるブロック染色織物工場でした。
片隅でうずくまって木型を彫っている、痩せた男性は、この道20年のベテランで工場の大事な技術者です。
工程は、流れてくる織物に二人一組になって木型を押印するというものでした。
「日本のビジネスマンはよく調査し、商談は実に厳しい。しかし合理的な利益は認めてくれます。私は事業を維持する力はマージンの幅だけではないと思います。
大切なことは人と人との信頼です。私の得意先は全部日本の会社です。」
工場長らしい人の説明は熱っぽくなり、その目は爛々として来ました。これは今回の旅行出始めて見た、事業に燃える真剣な眼差しでした。
宣教に従事する人々と視察団 ウダイプルで |
インドの苦闘と若い世代
インドでの最後の夜、マンテンの星の下で、国や人種を越えた友情の名残を惜しんで、神学校の校庭では深更まで話が続きました。片隅の売店には、宣教師資金のためにうられる生徒や教会の人たちの作品が並んでいました。
上品な物腰の青年が私のところに近寄ってきました。
自己紹介によると、父親はラジャスタン神学校の牧師をしているとのこと。
まだ15歳というのに数ヶ国語が出来るようで、傍らに控えめに立っていた妹も紹介してくれました。
「将来、牧師になりたい。日本の人に会いたいと思ってきました。お手紙をください。」
アマン・サガール君の言葉は静かでしたが、未来を夢見る青年の情熱を秘めた真摯な思いが伝わってきました。
私は、羨ましいとは思えなかったインドという国を去る前夜に、この青年の澄んだ眼差しに会えたことを、本当に嬉しく思いました。
礼拝堂をうめ尽くす会員 ウダイプルの教会 |
独特の文化と伝統の社会のなかで、若い世代は改革の意欲を燃やしているようです。
しかし、世界の情報が目の前に繰り広げられているのに、今なお頑なに変化を拒んでいる社会をどう改めていけるでしょう。
ガンジス河の水浴、牛やラクダと同じ道路を自動車も走る土埃の街、何世紀も前の壮大な建築物、ますます深刻になる階級制度、近代都市ニューデリーと対象的に、救いがたい極貧のどん底に墜ちているホームレス。
驚いたことに全人口の10%が国全体の富の60%を所有し、その金持ちたちは海外にいるというのです。
一行を見送る孤児たち アイザウル市内 |
「インドは、近代的な経済・政治秩序の中で然るべき位置を確立しようとする、古い歴史をもつ国民の苦闘を象徴しています。
…インドの歴史は、植民地時代から脱し、当時受けた資源的損失や精神的打撃から立ち直ろうとする国の歴史でもあります。」
駐日インド大使館に備えられている日本語のパンフレットは、怯れずに「インドの苦闘」という言葉を使って、私たち日本国民に訴えています。
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Salamat Siang! (今日は!) <私はユリアナです、どうぞよろしく。> Yuliana TERIMA KASIH (ありがとう) |
ユリアナは、現在高校2年生で、ダヤック族の農家の娘。
聖書を毎日読み、教会に熱心に通い、青年会の活動にも励んでいることを一度ならず手紙に書いてきました。
家では両親の手伝いをし、弟、妹の面倒を見ている孝行娘です。
昨年5月の手紙には、親切な一人日本人が私の家を訪ねてきてくれて、大変嬉しく幸運であったと書いてありました。
その日本人の名前は書いてありませんが、草野理事長のことと思います。
一方、最近の手紙では家族内で色々な問題を抱えて困難に直面しているので、私たちのために祈ってくださいと訴えています。
どんな問題なのか分かりませんが、どうか皆様も祈りのなかに覚えて下さい。
里親、松本とみ
【理事会報告】
第84回理事会は1996年4月26日一ツ橋学士会館で開催。前回議事録承認。1996年1、2、3、月度会計報告承認。通信第27号原案承認。4月30日発送。
第28号の内容は、理事長の新年度挨拶、決算、予算、会員状況、木内氏の韓国訪問報告など。里子の手紙を翻訳する奉仕者の紹介。会則等の一部改正。
第85回理事会は6月21日(金)一ツ橋学士会館で開催予定。
〈編集後記〉第28号の内容は、理事長の新年度挨拶、決算、予算、会員状況、木内氏の韓国訪問報告など。里子の手紙を翻訳する奉仕者の紹介。会則等の一部改正。
第85回理事会は6月21日(金)一ツ橋学士会館で開催予定。
佐倉の季節も過ぎ、新緑の美しい頃となりました。久し振りに寒さの厳しかった冬に続き、4月も花冷えの日々でしたが、お障りなくお過ごしでしょうか。
今回は理事長のインドでの経験をお知らせする特集号になりました。行間をお読みいただければ幸いです。
(鳥海百合子)
今回は理事長のインドでの経験をお知らせする特集号になりました。行間をお読みいただければ幸いです。
(鳥海百合子)