クリスチャン パートナーズ
通信56号
松本繁雄顧問 ボランティアリズムを語る
現在クリスチャンパートナーズの顧問をしていらっしやる松本繁雄氏は、長い会社生活のうち三分の二を東南アジアの国々で過ごされました。現役を退かれた後は、クリスチャンパートナーズの立ち上げに理事として参画され、「通信」でインドネシア語の指導や、ボランティア活動推進国際協議会の日本事務局での活動を記事として紹介してくださいました。そのほかインドネシアでの宣教活動支援団体など幅広くボランティア活動に加わっていらっしゃいます。
日本では阪神大震災後、ボランティアの種類や支援組織が増え、より活動しやすくなりましたが,松本氏は「ボランティアは相手に対する思いやりがなくてはできない。現地へ行き、そこで生活し、自分の目で見、耳で聴くことが現地の人との相互理解を深めることになる。
松本顧問 |
今後は、アジアの国々で仕事が選択でき、誰でもボランティア活動ができるといったボランティアリズムが必要でしょう」と言われました。
そしてクリスチャンパートナーズの活動に関しては、根本はキリスト教に立ちながらも、クリスチャンの枠を越えた展開が活動を広げていく、何よりも信仰を持って、誠意を尽くしてプロジェクトに取り組んでいけば、サポートしてくれる人はいるはずと元気付けて下さいました。
ご自分のこれからについては、定年退職後はボランティアに関わっていこうと決めたきっかけがあったので、そういう選択をして良かった、自分の性分に合っていると思う、と言われました。
松本さん、あなたの後に続いていく人々のためにも、これからもお元気でがんばってください。
終わりに、クリスチャンパートナーズへの長年のご協力を感謝します。
ロバン村教会に贈り物が届きました
ジュナイデイ牧師からの要請にこたえて(「通信」第52号参照)、シンガポール経由で日本から特別援助として5万円の送金をしたところ、アケンから報告が来ました。
教科書を掲げて見せる子供たち |
☆ギター
☆教会学校の教材:幼稚科から中学科までの教材と、教師用ハンドブック
☆教科書:算数・英語・インドネシア語・保健・宗教・民族教育(すべて小学校用)
☆スポ―ツ用品:ピンポン台と用具、バレーボールとサッカーの用具
サッカーに興じる男の子たち |
ギターは礼拝での賛美に大変役に立ちます。教会学校のための教材は、子供たちに聖書を学ばせる助けになりますし、教科書は、買い与えることの出来ない家庭の子供たちに、学ぶ喜びを経験させます。
言うまでもなく、スポーツ用品は育ち盛りの子供たちの健康に寄与し、同時に楽しみを提供します。
昨年12月12日にこれらの贈り物を届け、子供たちに日本の皆さんからの主による愛を伝えました。
ありがとうございます。
アケンの指導でピンポンの練習 |
西カリマンタンの子供たち
SACの子供たちへの援助活動は、会員の皆様の祈りに支えられて着実に伸びています。しかし、遠く離れた西カリマンタンとのコミュニケーションがなかなか思うように取れないのが悩みの種です。子供たちの姿がもっと鮮やかに目に浮かび、その息吹が感じられたら、現地の状況がもっとよく分かったらというのが私たちの願いでした。
そうした課題を抱えて、クリスチャンパートナーズの特別顧問で西カリマンタンについて熟知しておられるアンチオケ宣教会の安海牧師を理事会にお招きして、お話を聞いたのは昨年春の事でした。安海先生は西カリマンタンを中心にインドネシアで17年間宣教してこられた方ですし、西カリマンタンには今もアンテオケ宣教会から派遣された日本人宣教師が働いています。
この話し合いの中からアンテオケ宣教会を通して奨学金を送る構想が生まれ、昨年7月の学期始めから高橋めぐみ宣教師の協力を得て実行に移されました。
そして今年2月初め、クリスチャンパートナーズの草野理事長、松本繁雄顧問、木ノ内監事、私の4人が安海牧師の同行を得て現地に飛びました。アンチオケ宣教会との協力が私たちの西カリマンタンでの活動をより身近なものにしてくれるだろうという期待に胸を膨らませて。
YPPII西カリマンタン支部
2月4日昼過ぎ、私たちは西カリマンタンの玄関、赤道直下のボンティアナック空港に到着。高橋めぐみ宣教師と、現地でアンテオケ宣教会が提携しているキリスト教団体YPPIIの方々が笑顔で迎えてくださいました。
オトニエル君とケチアさんを囲んで 木ノ内監事、安海牧師、草野理事長、松本顧問、岩崎理事 |
高橋宣教師はインドネシア宣教の奉仕に就いて3年目,70kmあまり離れた内陸部のアンジュンガンから出て来て私たちに同行し、通訳も務めてくださいました。
まず行ったのは、ボンティアナツタ市内のYPPII西カリマンタン支部事務所で、敷地内に新しく建てられた女子学生寮の開設式が行われるところでした。
西カリマンタンでは地方に中学や高校などの上級学校が少なく、進学したい奥地の子供たちは学校の近くに住む所を探さなければなりません。宿泊費用は大変な負担になりますし、クリスチャンの子供たちがイスラム教徒の家に下宿することで、信仰の成長が妨げられることもままあるので、寮の必要性が非常に高いのです。
宗教の混在するこの地域の複雑な状況が垣間見えたように思いました。
ここでオトニュル君とケチアさんという兄妹に会いました。二人ともクリスチャンパートナーズの奨学金を得て、ボンティアナツク市内のタンジュンプラ大学で電子工学を専攻しています。
私たちの来訪を聞いてお礼を言いにきたのでした。カリマンタンの先住民であるダヤク族の牧師の家庭に生まれた彼らが、将来この地の人々のために働けるように、学業での成長を祈って別れましたが、援助の成果をこの目で見届けた思いに胸が熱くなりました。
ATI神学校
翌朝、車でアンジュンガンにあるYPPIIのATI神学校へ向かいました。ATI神学校のキャンパスは緑一色に覆われた丘陵地の斜面にあります。高橋宣教師はこの神学校の敷地内に住んで、神学生を教えていらっしやいます。ダヤク族の衣装をつけた神学校生たち |
この神学校の設立にかかわり、教えてもおられた安海牧師が、卒業式の記念礼拝で説教をなさるための訪問で、同行した私たちはゲストとして招待されたのです。
式典が始まるとダヤク族の衣装を着けた在校生男女が伝統の舞踏を踊りながら、卒業生を式場に案内し してきました。
この日卒業したのは男子18人、女子11人の計29人でした。
多くはダヤク族で、卒業後は西カリマンタン各地の教会やキリスト教施設で奉仕する予定だそうです。
その1人のユスチノス君は、東京にあるインドネシア人の教会で牧師として奉仕することになっており、東京での再会を約しました。
卒業式が終わってキャンパスの中を見て回りましたが、ここにも中学生の寮がありました。
遠くの村々から来た男女中学生が、その寮から学校に通っています。女子生徒は神学校の先生の家にお手伝いに行き、そこで食事もできるのですが、男子生徒は一日二回自分たちで食事を作って食べています。
男子中学生たちの食事 |
ちょうど何人かの生徒たちが食事をするところに行き合わせました。皿に盛ったご飯、それに青菜などの野菜を煮付けたものが汁ごとかけてあるだけの食事です。神学校の人に聞くと、予算がないためこれが精一杯だとのこと。
育ち盛りの子供たちがそれで足りるわけではなく、自分たちで川で魚を釣ったり蛙を捕まえたりして食べていると言うことでした。食べ物を余して捨てている日本の子供たちのことを考え合わせ、ここでも援助の必要を目の当たりにした思いでした。
午後3時を過ぎたころ、私たちはアンジュンガンを発ってさらに東300kmあまり奥地にある町シンタンに向かいました。運転してくれたのは神学校教授のクリス先生でしたが、一応舗装されているものの雨季とあって各所に穴が開いている道路を、ものすごいスピードで駆け抜けます。夜の11時ごろシンタンに着くまでには何度頭を車の天井にぶつけたことか。
シンタンとセイダウン(「通信第52号」の地図参照)
(地名スダウン=セイダウン)
次の日、シンタンにあるYPPIIの経営するインマヌエル中学高等学校を訪問しました。
教室が不足しているため、中学は午前、高校は午後の二部授業です。106名の中学生のうち17名をクリスチャンパートナーズが、8名をアンチオケ宣教会が援助しています。
インマヌエル中学校の生徒たち |
学費は月2万ルピア(約290円)ですが、この生徒たちは援助がなければ学校をやめなければなりません。高校では268名の生徒のうち、17名をアンチオケ宣教会が援助しています。フレデイ校長の話では、月2万6千ルピア(約360円)の学費を払えない生徒がまだ13名いるということでした。
援助を受けている生徒たちは、毎週火曜日に特別の聖書教育を受けることになっているそうです。
学校のそばを大河カブアス川が流れていて、インマヌエル小学校のタンリル校長が船外機付きの小船で私たちを迎えに来てくださいました。雨の降りしきる中を、一行は本流から支流へと小学校のあるセイダウン村まで2時間遡りました。
木ノ内監事 雨の中の船旅 高橋宣教師 |
タンリル校長の話では、付近の四つの村から98名の生徒が通っていて、生徒の中にはイスラムの家庭の子供もいるそうです。学費は4500ルピアく約65円)ですが、生徒の四分の一がこれを支払えないということです。それでも、生徒たちは明るい笑顔で私たちを迎えてくれました。子供たちからこの笑顔をなくしてはならないと私は強く思いました。
セイダウン村の小学校は本校で、もっと上流のシンクワン村とバウン村に分校があります。シンクワン分校では1年から4年まで56名の生徒を教師2人が教えていて、5年生以上はセイダウンの本校に来ます。
この生徒たちはサンバン(小船)を漕いで通学しているのです。バウン分校は1年から6年までの生徒88名を教師3人で三部授業で教えています。
私たちは分校まで行くことはできませんでしたが、各校の校長がセイダウンまで来てくれ、3校の教師たちと懇談のひと時を持ちました。
学費を払えない生徒がいることがもっとも大きな問題ですが、教師の給与も遅配を続けているという学校の苦しい台所事情がよく分かりました。経済が悪化したままのインドネシアでは,学校援助の寄付が思うように集まらなくなっているのです。
給与が遅配すれば教師は教育以外のことで食べていかざるを得ません。教室の不足による授業時間の少なさと合わせて、教育の質を保つことができないという切々たる訴えでした。
日本のお金に換算してみればさほどの金額ではありません。私たちの援助をもう少し増やすことで、子供や先生たちの笑顔を保てればとしみじみ思いました。
私たちは翌日400kmの道を駆け戻り、SACの子供たちが集中しているロバン村を訪ねましたが、その報告は次号にいたします。インドネシアの後に、新しく援助の必要性を調べるため、私たちはカンボジアへも行きましたので、その報告も御期待ください。
新しい教育援助始まる
アンジュンガンの神学校で教鞭を執る高橋めぐみ先生から、昨年9月にアンチオケ宣教会を通してお送りした約25万円の奨学援助金の受領通知と感謝のお手紙が来ました。
小学校の教師たち |
*インマヌエル中学校生徒17名に月額500円
*セイダウン小学校教師2名に給与の不足分月額3,500円
*ボンティアナツク市内の大学生5名に月額1,000円
を7月から支給しているとのことです。
大学生は、アンジュンガン神学校やインドネシア宣教交友会の職員の子弟だそうです。毎月高橋先生が送金してくださるようで、また奨学生たちの様子も伺えることと期待しています。
教会学校に集まったセイダウン小学校の子供たち |
SAC援助で高等学校を終了した子供たちの中から、その上の職業教育や大学への進学希望者が出た時のためにと用意した進学奨学金への応募者が、初めて現れたとシンガポールから知らせがありました。女子2名です。
☆リンダ
現在、サンガウの職業訓練学校で秘書になる勉強をしているが、卒業後聖書学校への進学を希望している。
☆ヴァレンティナ・パトリシア
公立高校の自然科学学級に在学中。卒業時の成績がよければジャワの大学に推薦入学できる。
理事会では希望者のより詳しい情報と、牧師の推薦状を送るように要望しました。すでにシンガポールに送金してある15万円で、2名の1年分の費用はまかなえると思われます
が、親元を離れての学生生活になりますから経済的には困難なこともあるでしょう。ぜひ実現させたいものです。
【理事会報告】第124回理事会は2003年1月24日(金)一ツ橋学士会館で開催。前回議事録承認。2002年11・12月度会計報告承認。「通信」第55号は11月30日発送済み。安海牧師引率の東南アジア視察旅行は2月3日から13日、インドネシアとカンボジアを視奏しシンガポールでCNEC訪問予定。米国PIの要請に応え海外援助に千ドル送金申し入れ。進学奨励金候補者について協議。IT関連のの広報拡充に努力する。第125回理事会は2003年4月11日(金)一ツ橋学士会館で開催予定
<編集後記>厳しい寒さが続きましたが、やっと桜の便りも聞かれるようになりました。皆様にはお障りなくお過ごしでしたか。イラクとの戦争に人々が注目しでいる今、イスラム世界の中に孤島のように置かれているキリストの教会に連なる友を忘れてはならないと思います。苦労の多い危険な旅の貴重な報告から、多くを読みとっていただければ幸いです。
鳥海百合子